コミュニケーションのストレスから解放されたい!医療現場で使えるアサーションとは?
現場で働く中で、相手にお願いしづらい、反対意見の主張がしにくいなどの経験はありませんか?そこで本記事では、医療の現場で活用したいコミュニケーションのテクニックのひとつ「アサーション」について、ご紹介します。
アサーションって何?
アサーション(assertion)とは、「自分のことも相手のことも尊重する自己表現」です。
1950年代にアメリカで誕生してから、ビジネスパーソンを中心に多くの人々から学ばれています。
アサーションの特徴は、お互いを尊重するコミュニケーションであることです。ただ自分の意思を伝えるのではなく、相手の話にも耳を傾けて聴く姿勢も重要としていきます。
アサーションを現場で使い日々トレーニングしていくことで以下のようなスキルが身に着きます。
・傾聴スキル
・相手の想いを汲み取ることができる
・相手の気持ちを尊重しながらも自分の気持ちも伝えられる など
現場でコミュニケーションをとる中で、「自己主張しては雰囲気を壊してしまうのではないかと遠慮してしまう・・・それがストレスである」という話をよく耳にします。一方で、「あの人はなぜあんなに強引なんだろう?」という職員の気持ちの裏には「自分がなんとかしなければ!」とか、「この意見だけは主張しなければならない」などという責任感が潜んでいることだってあります。しかし、お互いが良かれと思ってやっていたとしても、この状況が続けば対人ストレスや離職にもつながってしまうかもしれません。
現場の職員にとってコミュニケーションは避けて通れないものです。だからこそ、お互いを尊重し両者にとって良い(Win-Win)コミュニケーションがとれる「アサーション」を取り入れてみてはいかがでしょうか?
アサーションに大切な4つの前提
相手の気持ち・意見を尊重しながらも、自己主張をするアサーションを実践するためには、忘れてはならない4つの前提条件があります。
<アサーション 4つの前提>
1.誠実(Honesty):自分にも相手にも「誠実」でいること
2.率直(Directness):伝えるときは「率直」に
3. 対等(Equality):自分と相手は「対等」であるとし尊重する
4. 自己責任(Responsibility):他の誰かのせいにしない。自分の考えや意見・行動・結果は全て自分の責任である
アサーションを学び理解を深め、実践で活かしていくために上記4つの前提は重要です。
アサーション実践(1)現場でも実践しやすい【Iメッセージ】
アサーションの4つの前提をベースに、具体的な技法をお伝えします。
まずは、「I(アイ)メッセージ」についてご紹介します。
Iメッセージは、「I=私」を主語に、「私は○○だと思います」と、自分の意思を伝えるシンプルな方法です。
<Iメッセージの例>
■話の内容が良くわかりません
→「私は、もう少し詳しく教えて欲しいです。」
■理解できません、納得できません
→「私は、あなたと考え方が違うようです。」
■もう無理・・・
→「私は、とても辛いです。」
Iメッセージを使わない場合は、主語がよくわかりません。一方で、Iメッセージでは「私が」感じたことを表現しています。実は、主語がよくわからない伝え方をすると、相手は自分が悪いのかなど、責められている印象を与えてしまうことがあります。つまり、Iメッセージを取り入れることで、相手を責めるような印象を回避できます。
相手に自分の話を聴いてもらい、建設的な話あいをするなど好循環をつくるためにもIメッセージを取り入れてみてはいかがでしょうか。
アサーション実践(2)自分の考えを建設的に伝える【DESC法】
次に、「DESC法」についてご紹介します。
DESC法とは、角を立てずに自分の意見を主張するために用いる方法です。
<DESC法のやり方>
(1)描写(Describe):相手の行動や状況を客観的に描写する
(2)表現(Express):冷静に気持ちを伝える※適宜Iメッセージを用いる
(3)明確な提案(Specify):解決案・妥協案などを具体的かつ明確に提案する
(4)選択(Choose):「相手が同意したとき/しなかったとき」両方の対応を考える+選択肢を示す
<DESC法のポイント>
DESC法を使う時には、「Iメッセージ」と併せて使うことで相乗効果が生まれます。
<DESC法のケーススタディ>
■事例
△△科の○○部長は院内でも気難しいことで有名な存在です。
今回、○○部長担当の患者様の科内カンファを行うことになりました。
○○部長は、忙しいことを理由毎回カンファレンスを欠席しています。
しかし、今回は担当医としてなんとか参加して欲しい状況です。
さて、あなたはどのように依頼をしていきますか?
■回答例
(1)描写(D):○○部長、△△科は本当に忙しい科ですよね。
(2)表現(E):(私は)患者様の情報をもう少しだけでも、それぞれが理解できていれば、効率よくなることにつながるような気がしています。
(3)明確な提案(S):そこで症例カンファレンスをしっかりやっていきたいと思っています。
是非、先生に主治医として参加していただきたいのですが、お願いできますでしょうか?
(4)選択(C):YESの場合→ありがとうございます。では改めて時間と場所をお知らせしますね!
NOの場合→では、改めて、患者様の情報をそれぞれが共有できる方法をご相談させていただけたらと思います。
DESC法は、お互いが納得できる方向性や妥協点を見つけるために用いる方法です。(必ずしも相手を同意させるための方法ではありません。)そこで、相手がNOと言った場合も想定して回答を準備しておくことも会話のポイントになります。
アサーション実践(3)少しずつでも「NO!」と断る勇気をもつ
最後は、アサーションの観点から「断る勇気をもつ」ということについて見ていきましょう。
「断ると、嫌われてしまうんじゃないか」、「NOを言うことで、仕事がやりづらくなるんじゃないか」など、様々な憶測によって、断れなかった経験がある方もいらっしゃるかもしれませんね。
アサーションは、双方の気持ちや意見を尊重することが基本です。つまり、自分の気持ちを伝えること(=NOを言うこと)は決して悪いことではありません。しかし、現実的には、仕事でキッパリと「NO」は言えない・抵抗があるかもしれませんね。そんな時は、できるところから「自分の気持ちを伝える練習」だけでもしていきましょう。
不思議なもので勇気を振り絞ってNOを言ったり本心を伝えたりすると、本当は相手も同じような気持ちだったということがあります。互いに尊重ができており意見が言いやすい環境は、結果的に有益な情報交換や素晴らしい提案などを生み出します。
アサーションを活用して意見(本音)が飛び交う活気ある現場の環境づくりをしてみてはいかがでしょうか。
現場でアサーションを使ってみよう!
アサーションは、何度も繰り返し使って経験をすればするほど、対応できる幅が広がっていきます。角を立てずに自己主張できる自分はもちろんのこと、自分にはない人の意見も取り入ることで、クオリティの高い現場づくりにつながります。できる部分からアサーションをとりいれていきましょう。(日本医療コミュニケーション協会 梶原)
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