お役立ちコラム

なぜ、童謡を歌うと患者さんは涙を流すのか?

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なぜ、童謡を歌うと患者さんは涙を流すのか?

■介護施設のイベントでは、
みんなで童謡を歌うことがあり、
しばしば涙を浮かべている方があります。

ところで、
なぜ、最近の流行りの歌ではないのか?
なぜ、最近の流行りの歌では、涙を流さないのでしょうか?
と、考えてみたいことはありますでしょうか?

このことは、医療福祉現場でよく言われる
「心に寄り添う」
ということの本当の意味がわかる入り口なのです。

それは、
人間の心理構造から考えると見えてきます。

人間の心の生命線「承認欲求」

■まず一つ目の心理構造について説明しましょう。

人間の最も根源的な欲求は、
「承認欲求」
だと言われます。

言い換えれば、
「無条件に理解され応援されたい欲求」
です。

よく、
「赤ちゃんが生まれたら、お母さんはたっぷり承認してあげましょう」
と言われます。

実際、母親は、
赤ちゃんが寝返りを失敗しても、
つかまり立ちを失敗しても、
「上手上手」
「よく頑張った」
と、結果によらず、
無条件に理解し応援していることでしょう。

これが
「承認」
です。

そして、この欲求は、
生まれた瞬間からあり、
たとえ認知症や統合失調症になろうとも、
一秒たりとも途切れることなく、人生の最後の瞬間まで続くものです。

認知症が進行し、
「お父さん、きょうは顔色が良いようですね」
と目の前で言っている人に、
「この男は誰だ?」
と思っている人であっても、
「この男は味方なのか?敵なのか?」
つまり、自分を承認してくれる人なのかどうか?だけは
最大の気がかりなのです。

現に、身体や言葉が不自由になり、
人のために、何一つ貢献できることがなくなった人でさえ、
この承認されたい欲求はなくなりません。

むしろ、だからこそ、周囲の人が自分を承認してくれるのかどうかが
生命線と言っても良いくらい重大な問題となることでしょう。

また、周囲から承認されていることが感じられない時、
行きて行くことすら困難になります。

たとえば、暴力を振るわれなくても、
周囲からただ無視されただけでも、
そんな学校や会社に通い続けることは、難しいことでしょう。

中には、それが原因で自殺の道を選ぶ人すら
世の中にはいます。

つまり、承認欲求は、
心の生命線とも言えるでしょう。

したがって、
最も根源的な欲求だと言えるのではないでしょうか。

希望を持てない時、人は過去を思う

■次に、二つ目の心理構造について。

人間は、希望が持てる時は、将来ばかりを考え、
希望が持てなければ、過去の良かった時を考える、
という性質です。

希望がが叶うと思える時は、
叶った時のことを考えることで
心が明るくなり、いつもそのことばかりを思い浮かべて
幸福に浸る、という経験を誰もがしているのではないでしょうか。

旅行にゆく前や
幸福な結婚の前は、
どんなに心が明るいことでしょうか。

反対に、
希望が持てない時は、将来を考えることが
心を苦しくしてしまいます。

そのため、おのずと
過去の良かった時のことを思い浮かべることになります。

ひとの役に立てることが一切なくなった時

■さて、
そこで、介護施設の方々についてですが、
高齢者となれば、
他者から承認されるということがほとんどなくなり、
また今後、承認してくれる人が自分の人生に現れるという
希望を持つことも難しくなって来ます。

人の役に立てることも無くなってきたとき、
日々、周囲の人に
「ありがとうございます」
「申し訳ありません」
と何十回と頭を下げるばかりで、
人から感謝されることが稀になってしまった時、
どんなに生きづらいと感じることでしょうか?

しかも、たとえば、
わたしたちが入院して一時そのようになるのとは
まったく違う心境です。

高齢者の方々は、
回復して退院したり、
入院中のお返しをして回ることもできません。

そして、そんな毎日が、自分の命が終わる日まで
どれだけの年月、続くかはわからないのです。

もしかしたら、今そうでない方の中には、
想像するだけで気が遠くなる、
という方もいるのではないでしょうか。

そんな心理状態ですから、
おのずと、
過去に、
無条件に愛され、守られ、理解され、応援された頃を
思い浮かべることになるのは、自然なことだと感じられるでしょう。

しかも、最も承認された頃、
つまり、物心がついたかつかないかという時期、
両親から溢れるほどの愛情を注がれ、
何の不安もなく過ごすことができた幼い時期を
追体験しようとすることは、
心理構造から考えても、
ごく自然なことかもしれません。

童謡を歌っている時の患者さんの心象風景とは

■つまり、介護施設で童謡を歌っている時、
高齢者の方々は、
それぞれに、
自分が幼い頃の、
まだ若く、童謡を歌いながら抱きしめてくれている懐かしい両親の
腕の中に帰り、
溢れる愛情を注いでくれる両親との時間を過ごしているのでは
ないでしょうか。

■したがって、
介護施設のみなさんが、
イベントで、
童謡を歌うことを催しに組み込む意味は、
実は、
もう会えないはずの最も大切なご両親に会わせて差し上げている
ということでもあるのしょう。

■そうでなければ、
涙を流す理由の
説明がつかないのではないでしょうか。

言葉や態度よりも大切なコミュニケーションがある

■このように、医療現場のコミュニケーションは、
単に、言葉のやり取りや立ち居振る舞いのことではありません。

むしろ、
心と心のふれあいは、
言葉のやり取りや立ち居振る舞いよりも
何倍も重要です。

医療コミュニケーションは、
人と人との関係性を創るための方法なのです。
ぜひ、心と心のふれあいを、
どのようにつくれば良いのか、一緒に学びましょう。

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