あなたは、思ったことをきちんと伝えられますか?

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あなたは、思ったことをきちんと伝えられますか?

普通の会社員や公務員とは立場が違うとはいえ、医療従事者といえども、言葉は悪いですが勤め人である以上、「雇われ」であることは間違いありません。あえて屈辱的な言い回しをすれば「飼い犬」ということになります。
飼い犬は主人に尻尾を振るもの。特に主人の権力が強ければ強いほど従順に尻尾を振るものです。

駄目なものは、ダメと言う

「これ、どう思う?」
「いいですね」
「やっぱり、こっちの方がいいかな」
「私もそう思います」

仕事の現場でこのようなやり取り、皆さんも目の当たりにしたことがありませんか。いえ、皆さん自身が院長や部長に対してこのような態度を取っていませんか。

人の生き死に関係する医療従事者であれば、相手がだれであろうと、自分が正しいと思ったことを言う。これは、鉄則だと思います。

駄目なものはダメとはっきり言う。もちろんダメの根拠は示さなければなりませんが、明らかに「この件における部長の見識はおかしい」と感じたら、「それは良くないんじゃないですか」「おかしいと思います」と、はっきり物申すことは医療従事者の重要な役割なのだと認識しなければいけないと思います。

言いにくいことをはっきり言って(本当のことをきちんと伝えて)、それにより相手の気づきを誘発し、硬直しそうな事案が前に進んだという経験は、皆さんも何度となくしているのではないでしょうか。
むしろ、イエスマンであればあるほど信頼されません。

相手との関係作りを強化したい。病院の「あるべき姿」を最優先したい。
そう真摯に考えて日々業務を実践していけば、おのずから「おかしいものは、おかしい」ときちんと伝えようと考えるはずなのです。

これを言うと部長は怒るだろうな、と考えている時点で本来の医療の仕事をしていないと言ってもいいでしょう。それを言うことで医療の質が高くなるのが明らかであれば、絶対に進言するべきなのです。

かと言って、頑なに自分の意見を押し通せ、折れるなと言っているわけではありません。
相手の間違いや思い違いを正すという目的だけでなく、自分の考えを示すことで上司や意思決定者の判断材料が増える、そのような狙いもあるのです。

「怒る」より「褒める」

事例を1つ挙げてみます。
その事務長は、とても細かいことに気づき、それを部下に厳しく指摘するタイプで、従業員は皆萎縮し、何も言えない空気に支配されている状況です(さすがに、大勢の前で特定の従業員を叱責することはないのですが)。
怒られるのが嫌なので報告を躊躇する、それがバレる、さらなる逆鱗に触れる、といった完全に負のスパイラルに陥っていました。

それを断ち切るためには、「すぐさま怒る」という第1ステップを改善すればいいわけで、私は「部下には怒るより褒めた方が伸びますよ」という進言をしました。

「褒めるところなんて何もない、使えない奴らばかりだ」と、最初は聞く耳を持ってくれませんでしたが、とにかく一度褒めてみてくださいとしつこく食い下がり、何とか一人二人と、おそるおそる報告を上げる部下に対し、まずは怒りたいところをじっと堪え、「よくやったね、大変だったろう」と労をねぎらうことから始めてもらいました。
さらには、欠点を指摘し直させるという従来のやり方から、良い点を褒めてそこをさらに延ばすというやり方に方向転換していきました。

最初は懐疑的だった事務長も、部下たちの変化を目の当たりにして合点がいき、自分自身のストレスが軽減しているのも意識されました。

事務長と部下の間に横たわっていた深い溝も次第に埋められていき、当然それは従業員たちのモチベーションの向上にも結びつき、という良い連鎖を生むことになりました。

本心でぶつかり、存在価値を認めさせる

上司に物申すことで上司の信頼を得る。これは医療従事者が誇りを持って仕事をしていく上で実に大切なことだと思います。

どんなにワンマンでカリスマ然とした上司でも、経営を上手く軌道に乗せている人は商売勘が鋭く、それなりに聞く耳は持っているはずです。

自分の価値基準に照らせて良い悪いを判断しがちですが、皆さんの言い分が自分の想像力を凌駕するほどの素晴らしいものであれば、一目置く公算は高いと思います。

そうなればしめたもの。何でもかんでも相談しに来、頼りにしてくれるようになります。
さらには、プライベートでも付き合うようになり、いわば「なくてはならない存在」にまで発展することも十分にありえます。

以前、私がお付き合いしていたクリニックの経営者Dさんは、周囲のだれの言うことも聞かない、聴く耳もたない、といった王様然とした人でしたが、私は本心でぶつかり自分の存在価値を認めさせました。

そうなると、さまざまな場面で呼び出されるようになり意見を求められるようになりました。

Dさんから正月2日の朝っぱらに電話がかかり、「昨日の元日から伊豆のどこどこに泊まっている。あんたも美味い魚を食いに来い」という誘いが入ったことがありました。さすがに断ると、「じゃ、明日はどうだ?」と畳み込まれます。
結局は断りきれずに3日にお付き合いしました。万事がこんな具合で、嬉しい反面、面倒くさかったのも事実でしたけれど。

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