もし部署異動を命じられたら、あなたの「やりがい」は保てますか?①

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もし部署異動を命じられたら、あなたの「やりがい」は保てますか?①

看護師の確保と育成は、あらゆる病院の課題であると思います。その解決策の一つとして多くの医療機関で検討されるのが「病棟と外来の一元化」です。確かに一元化が図られ、それが思った通りに機能すれば、人的資源の効率化が見込まれ、病棟・外来双方の看護師のスキルアップが期待でき、業務効率も向上し、病院が得られるメリットは大きいでしょう。

具体的なメリットは大きく分けると2つあると考えます。1つ目は、患者視点で見た場合の「切れ目のない看護が提供できる」こと。2つ目は、現有看護人材の効率的な活用が図れること。外来の診療が終了した後、勤務の終業時間まで時間的余裕のあるスタッフが出てしまうことは「もったいない」ことですし、一元化が機能すれば、病棟業務に余裕があるときに、外来に応援に行くことも可能になるでしょう。
ある病院の看護部長は、一元化を実施する上で、最初はキャリアラダーⅢクラスの看護師でトライアルし、軌道に乗れそうだと判断できれば、若手も含めて本格的に導入する予定だと話していました。

しかし、高度急性期病院では、病棟・外来の看護一元化は、それほどメリットを得られるとは思いません。このようないわゆる大病院では、患者さんは地域のクリニックから紹介され紹介状を持って来院し、外来で検査を受け、入院。そして手術などを受け、短期療養の末に退院。退院後はほとんどの患者さんが地域のクリニックに戻るという流れになります。ですから、一人の患者さんと継続して関わる期間が短く、前述した「切れ目のない看護が提供できる」メリットはそれほど受容できません。それに対し、中規模の療養期間の長いケアミックス型の病院は、退院後も継続的に通院する場合がほとんどですし、入退院を繰り返す患者さんも多いことから、一元化のメリットは受けやすいと思います。

そして、効率や経営的な側面とは別に、当の看護師が「あなたは、今後外来も病棟も両方担当してくださいね」と言われたときの、心理的な負担感、抵抗感をどのように「やる気」に変えるか、そこの課題は大変大きいと考えます。
たとえば外来経験のない病棟看護師は、外来勤務に対し、どのようなイメージを描くでしょうか。「同じ仕事の繰り返し」「看護をしても評価をされない」などのマイナスのイメージで捉えている場合が意外と多いのではないでしょうか。外来看護師が特に必要とされる「相談対応能力」「コミュニケーション能力」などは頭に描きにくいのかもしれません。よって、病棟看護師が外来への「異動」を告げられた場合、「断る」「悩む」と回答していた人が80%を占めるといった「異動」に関する看護師向けの調査の結果も、うなづける気がします。要は「やりがい」を感じにくいということなのでしょうが、ここで「やりがい」とは何かを整理してみましょう。

ある看護師に「やりがい」はどのような時に感じるかと質問したところ、「自分に価値があると感じさせてくれる仕事をやれたとき」と答えていました。この言葉は、非常に重要な示唆を含んでいると思います。多くの医療機関における「看護師の離職」の根本要因は、報酬などの待遇や休日・夜勤などの条件に関わることではなく(それも大きいですが)、「自分に価値があると感じさせてくれる仕事」と、看護師自身が感じていないからではないでしょうか。以下のような言い回しも可能かもしれません。「自分が行ったケアや、そのケアによる患者さんの反応から感じる目的を成し遂げたという満足感や充足感、また、それらを通して感じる自己の成長に対する喜びなどの感情」それが得られない。だからこの職場にいてもしょうがない・・・筆者の個人的な見解として、この「自己の成長に対する喜びなどの感情」を得られるか得られないかが、離職の決断の大きな部分だと考えています。
また、仮に病棟から外来への「異動」を告げられた時、多くの看護師が「病棟での自分の存在を否定された気持」「病棟看護への心残り」「予想外の異動に対する驚き」「外来看護に対する不安」などを、程度の差はあれ多くの人が感じることは想像に難くありません。
このような「メンタル面での大きな葛藤」を軽く見て、あるいは十分に考慮せずに、経営効率や患者さんの一元管理といった機能面だけで「異動」を実施すれば、それが遠くない時期に「離職」という「報復」で返される可能性が高まることは、心に留める必要があるでしょう
今回の「異動とやりがい」の問題は、次回のコラムでも採り上げたいと思います。
(医療コミュニケーション協会 須田)

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