なぜ、やって欲しいことが伝わらないのか?

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なぜ、やって欲しいことが伝わらないのか?

医療施設の管理職の皆さんに、一番頭を悩ますコミュニケーション上の課題は?という質問をしたら、どんな答えが返ってくるでしょうか。
おそらく、「やって欲しいことが上手く伝わらない」が、かなり上位を占めるのではないかと思います。なぜ、やって欲しいこと、伝えたいことが部下や後輩に伝わらないのでしょう?

コミュニケーション研修参加のきっかけ

「やって欲しいことが上手く伝わらない」と悩む管理職の人に、なぜそうなるのかを聞いてみると、「私の伝え方が悪いのだと思います」と、自分のコミュニケーションの不手際を自嘲的に口にする人が多くいます。

当協会の主催するコミュニケーションの研修でも、「周囲のスタッフに上手く自分の思いを伝えることができずに関係がぎくしゃくしている」「ビジョンや仕事の目標を伝えているはずなのに、なかなか浸透しない」などの悩みを抱え、それを改善するために「自分のコミュニケーション力を高めたい」という動機を持って参加される方が多いように思えます。

しかし、「伝え方・教え方」などのコミュニケーション技術を上達させただけで、問題は解決するのでしょうか?

管理職の嘆きとあきらめ

コロナ流行の前に、都内の中堅規模のある病院で、看護部の管理職だけを対象にしたコミュニケーション研修を数回にわたって実施しました。
やはり、上述したような悩みを訴える管理職の方が多く、ほとんどの方が「自分の伝え方や教え方」に問題があるのだと悩んでいました。

そこで、私が聞き手の役をやり、受講者にいつも部下や後輩に接するように「自分の仕事に対する考え方や、やって欲しいこと」を話してもらいました。
皆さん、非常に丁寧に説明をしていましたし、相手の立場に立ってわかりやすい言葉を意識して使っていたように思います。

そのあとに、私は受講者に、今のように説明した後に「皆さんが伝わっていない」と感じるのはどんなところなのでしょう?と質問しました。

すると、ある管理者の方が、「具体的にお願いしたことは理解するし行動も起こすのだけれど、その先、つまり自分なりの工夫や判断をしなければいけないところに差し掛かると、とたんに何をしていいかが分からなくなるみたいなんです。お願いした件の目的を理解していれば、できるはずなんですけれど。やっぱり伝え方が下手なんですかねぇ」と嘆き、「今の若い子たちは言われたことはやるけれど、その先、自分で考えることをしない」と、よく管理職の方が口にする決まり事も口をついて出てきました。

あなたなら、どうしたらいいと思う?

そこで私は、やって欲しいことを全部具体的に伝えたり教えたりするのではなく、時には目的だけを話して、「あなただったらどう対処したらいいと思う?」という「問い」を投げかけてみたらどうでしょう、という提案をしてみました。

その次の研修の際、前回嘆いていた管理職の方が開口一番、「私自身の教え方は変えていないのに、伝わり方がずいぶん変わりました」と、嬉しそうに話してくれました。私の提案を受け入れ、相手に考えさせるというやり方を試みたそうです。
「私が気づいていないことまで言ってくれるようになったし、思ってもいなかったやり方をしてくれることもあるんですよ」と、管理職の方は言いました。

私だったら、こうする

一方、私はお願いされる側、つまり一般職の方々にも話を聞いてみました。
すると、次のような意見が出てきました。

「看護師長からは、以前は『こうやりなさい』という指導ばかりだったのですが、最近は私に考えさせるようなアプローチをしてくれるようになりました」
「教えていただくより、『どうしたらいい』と問いかけてもらう回数が増えました。だから、自分の考えをどんどん言うようにしています」

上司の問いかけによって、一般職の人たちにどのような心理的な変化があったのでしょう。
まず、受け手が「指示された要件の意味や目的をしっかりと考えるようになった」ことが挙げられるのではないでしょうか。
そして、要件への関心が高まり、「自らの力でより良い方法や解決策を発見したい」という無意識の願望が高まったのではないかと思います。

メンバーに「こうしてもらいたい」と思う時、私たちは、自分が考えていることを実践させようとしがちです。
そして、出てきた結果に「違うんだよなぁ、どうして伝わらないかなぁ」と落胆することもままあります。

そんな時、あなたならどうしたい?と「問い」を投げかけることで、相手の中の「自分で考えて解答したい」という欲求を引き出すことも、時に思わぬ好結果を産み出すことがあります。
さっそく、試してみてはいかがでしょうか。
(医療コミュニケーション協会 須田)

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