Z世代の時代がやってくる①

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Z世代の時代がやってくる①

「Z世代」という言葉を一度ならず耳にした人は多いと思います。Z世代とは主に欧米で議論されてきた世代論の果てに命名されたネーミングですが、具体的には、1996年から2012年の17年間に生まれた若者のことを指します。日本でも、主にそれまでの世代とは異なる消費行動の視点からこの世代の特徴が注目されてきました(あるいはこの記事を読まれている中にも該当する方がいるかもしれません)。40代、50代のベテランから見れば、「理解のできない異星人」と揶揄されることもある世代ですが、この世代が明日の医療における中心的役割を担うのは、そう遠い未来のことではありません。
今回と次回の2回にわたって、Z世代とのコミュニケーションのあり方について述べてみようと思います。

日本経済の繁栄を知らない世代

そもそも、なぜ「Z」なのかというと、彼らの前の1965年から1980年頃の生まれの世代がX世代、1981年から1995年生まれがY世代と呼ばれていて、Z世代はその系譜を踏んでいるわけです。
Z世代とその前の世代、特に「バブル期」を体験してきた世代との最も大きな違いは、経済の環境であろうと思います。Z世代の若者が生まれてきたときには、バブルの好景気はまさに泡のように消え去り、「失われた20年」の真っただ中でした。

その景気の低迷と裏腹に、急激に台頭してきたのが「デジタル」の浸透で、Z世代は、生活のすべてにわたりデジタルを活用するに至る初めての世代です。
学習や情報収集においては新聞や本仕立の辞書や辞典を使わず、あらゆる消費の手段としてもデジタルを活用します。経済低迷期に生まれ育った者には、普通の店舗で正規の値段で物を買うなどありえないことなのです。
今でこそ、あらゆる世代がデジタルを中心とした日常を送っていますが、Z世代の人たちは「アナログ」を知らずに、いきなりデジタルを何の抵抗もなく物心がついたときから使うに至った世代です。

Z世代はスマートフォンやタブレットを使い、地球の裏側の出来事をリアルタイムで、場所やタイムゾーンに縛られずに見ています。eスポーツで知り合った母国語が違う人とも会話をし、アプリや動画などのメディア・プラットフォームで語学や料理、化粧、筋肉トレーニングを習い、起きている間はモバイル端末を手放すことがありません。安価なモバイルテクノロジーをいつでも使えることは、まちがいなくZ世代最大の決定的なトレンドであり、子供のころからテクノロジーに浸る環境は、個人の世界観・価値観をはじめ、さまざまな側面でZ世代の根幹を形作っています。

半面、モバイルでは誰とでも画面上の交流や会話が抵抗なくできるのに、リアルでは、つまり実際の人と人とのコミュニケーションは苦手な傾向にあります。さらに、新型コロナウイルスによって引きこもりが強要され、恐怖や不安、混乱を味わわされているため、その傾向はますます顕著になっているように見えます。

そんな世代が、今後医療機関にも次々と入り込んできます。彼らのデジタルリテラシーの高さは大いなる武器になるでしょう。一方で世代のギャップによるコミュニケーションの高い壁が構築されてしまう危険性もないとは言い切れません。

Z世代の特徴的な「気質」とは?

Z世代以前の世代では、概して「地球温暖化」や「環境汚染」「人種差別・性差別」などの問題は、身近に迫っている切実な問題というより、自身の暮らす日常とは一線を画した広義の社会問題ととらえる傾向にあるようです。一方で、Z世代は、他人と争うのではなく自分を高めるという意識が高い分、SNSを通じて世界中で起きている不平等の問題なども自分事としてとらえ、多様性の重要性や、一人ひとりの行動でも志を同じ者が集えば何かが達成できると考える傾向にあります。

Z世代に特有な傾向として、1つに「SDGs」への関心の高さが挙げられます。日常的な事柄に関しても、「SDGsに関し、共感し実行していることは何か?」などのアンケートを実施すれば、「商品はなるべく最後まで使い切る」、「食べ残しがないように心がける」、「エコバックをなるべく持ち歩くようにする」といった項目に対して、6割ほどが賛意を示し、実行しているとこたえています。

2021年に日経新聞が実施した「Z世代のサステナブル意識調査」においては、関心のある社会問題として、「人種差別」「飢餓・栄養不足」「ジェンダー不平等」「LGBTQ差別」が挙げられ、これは他の世代では見られない傾向にあります。SNS上で見知らぬ人に共感したり声を上げることに抵抗がないため、権利や差別を訴えている人たちに対して、その活動を評価し応援したい気持を強く持つ、という傾向が顕著に見られます。

「コト消費」へのこだわり

1990年代に入ると、高級車や洋服、バッグ、アクセサリーなどの「身の回り商品」において、ブランド製品を所有することによる差別化意識や優越感を刺激する消費潮流は影を潜め、習い事やヨガ、トレーニング、リラクゼーションなどのアクティビティと呼ばれる消費機会の需要が急激に高まり、「モノ」より「コトの体験」が人々の消費を活性化させていきます。いわゆる「コト消費」です。
「コト消費」はSNSを駆使するZ世代に特に強い関心を喚起させ、youtubeで自分独自の「コト消費」をアピールしたり、「インスタ映え」のように、商品のブランド価値ではなく、写真として「映える」ことや、「いいね!」で承認要求を充足させることに注力するようになりました。「SNSにアップされていなければ何も起こっていないのと同じ」という消費文化が定着化され、Z世代の若者には「SNSに投稿されることで消費が完結する」という流通のあり方が当たり前になってきました。

これから医療の現場に入って来るZ世代の若者は、このようにこれまでの世代とは、「モノやコトに対する考えや価値観」に自分たちとは一定の隔たりがあることを、ある程度は心に留めて接する必要がありそうです。次回のコラムでは、Z世代の育成やコミュニケーションの方策を検証していきます。
(医療コミュニケーション協会 須田)

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