問題を解決に導くためのヒアリングができていますか?

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問題を解決に導くためのヒアリングができていますか?

話を聞くことの大切さがクローズアップされています。組織の活性化を図るべく、特にマネージメント職を対象にしたヒアリング研修、傾聴セミナーなどが盛んに行われています。
私たちにも、医療機関のみならず、一般企業からも、その種の研修やセミナーの依頼が次第に多くなってきていますが、実際の現場での管理職と一般職の会話を聞かせていただくと、正直、部下の話や訴えを、管理職の方々はほとんど「聞けていない」のを実感します。

問題は、聞けていないことに気づいていないこと
一例を挙げてみましょう。ある病院の事務長と部下のやり取りです。

事務長「〇〇君、例のクラウド電子カルテの導入の件、どうなってる?」
部 下「すみません。業者の担当者からまだ具体的な計画プランが上がってきていないん
です。催促はしているんですが・・・」
事務長「月末の経営会議には何らかの進捗を報告しなければならないんだよ」
部 下「結構、難航しているみたいで・・・」
事務長「そんな悠長なこと言ってる場合かよ!」

事務長は、はっきりしない部下の言い分に苛立ちをつのらせます。

さて、この会話のどこが問題なのでしょう?
私が気になるのは、「事務長は、部下と業者の間に起こっている具体的な事実を何一つ聞こうとしていない」ということです。

部下は、依頼案件に関し、業者とどのような交渉を行っていたのか。
具体的な希望提出期限を示せていたのか。
どんな点が難航しているのか。代替案はないのか。
同僚および先輩などからアドバイスを得ているのか。

事実を聞くことで、部下の行動の問題点や気づいていない点などが確認でき、適切なアドバイスや部下の成長を促す教育もできるのですが、その機会を放棄してしまっています。
そして、一番の問題は、事務長本人がそのことに気づいていないことです。

「事実」とは、具体的な行動の内容を、できるだけ数値化させたもの。
上司は、なぜ、「事実」を聞こうとしないのでしょうか。
それは、先入観から来るものだと思われます。
「この部下に任せたのは無理だった」「使えない奴だな」「結局、自分が出張ってやるしかないんだ」
部下の報告を聞きながら、心の中はこのような先入観に支配され、部下の状況を冷静に見極め、「事実」を聞くことが完全におざなりになっているのだろうと思います。

それでは、さきほどの事務長と部下の会話を、「事実」を聞くという視点で再構築してみましょう。

事務長「〇〇君、例のクラウド電子カルテの導入の件、どうなってる?」
部 下「すみません。業者の担当者からまだ具体的な計画プランが上がってきていないん
です。催促はしているんですが・・・」
事務長「何がネックで計画が遅れているのかな」
部 下「当院のシステム上の問題がいろいろあるみたいで。当初の予定通りにはいかないようなのです」
事務長「ウチのシステムの何が問題なんだろう」
部 下「そこは詳しく聞いていないんですが・・・」
事務長「ウチの管理システムに関し、詳しいのは誰かな」
部 下「Aさんはシステム立ち上げの際に関わっていたメンバーなので詳しいと思います。そうかAさんに交渉の場面にも入ってもらえばいいんですね」
事務長「それがいいね。私の方からAさんに話しておくよ」
部 下「お願いします」
事務長「それじゃ、月末の経営会議に間に合うよう業者と折衝し、Aさんの協力を仰いで、少なくとも見積額と大枠の実施案の2つは2週間後には示すよう指示してください」
部 下「わかりました」

「事実」を聞き出していけば、行動と数値(この例の場合は締切り日時)を具体的に示す
ことができ、部下は次に自分が取るべき行動を自覚します。

ここで間違ってもしてはいけないことは、マネージャーが部下の代わりに自分がやってし
まうことです。
マネージャーの役割は、「事実」をしっかりと聞き出し、その上で問題や課題を部下に自
覚させ、質問を重ねて気づきや発見を促し、部下が自ら解決策を導き出す、というもので
す。
部下の答えや返事にあいまいなことや不明確なことがあれば、その場で「それはどういう
ことなのか」を明確にする必要があります。

マネージャーの方々はため息交じりに、よくこんなことを言います。
「部下の成長が見られない」
「言われたことしかやらない。やれない」
「何が重要なのかを理解できていない」

これはもしかすると、マネージャー側に、「事実」を聞き出し、解決を導き出すためのビ
アリングができていないからかもしれません。

(医療コミュニケーション協会 須田)

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