私はこういう人間です、という自己認識は正しいか?

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私はこういう人間です、という自己認識は正しいか?

医療スタッフと1対1の面談をするときに、必ず聞くことがあります。
「〇〇さんは、ご自分をどういう人だと思っていますか?また、周囲からどのような人だと思われていますか?」
なるべく、言葉を飾らないで思うままにこたえてもらいます。

私と相手の認識のギャップ

「ちゃんとスタッフたちとは向き合えていると思いますよ。この前、コーチングの研修を受けて、『傾聴』のトレーニングもしましたし、昔よりはコミュニケーションがうまくとれるようになりました。私自身、ずいぶん変わったと思います」
ある医療施設の看護主任は、ちょっと得意げにそう話してくれました。

ところが、スタッフ数名に彼女が言ったことを伝えると、
「私たちの意見も聞いているような素振りは見せるけれど、結局は自分の考えを押し付けるという結論にかならずなる」
という見方が大半でした。そして、「あの人は、ぜったいに変わらないですよ」と、尾ひれがつきます。

「私の認識している私」
「他者が認識している私」
この両者には、程度の差はあれ、必ずギャップが存在します。

この人に本音は語りたくない

このギャップを理解せず、「私の認識している私」だけでコミュニケーションをとろうとすると、ギャップはますます大きくなり、気が付いたときは相手との意思疎通がまったく機能していない状況になります。

「突然、看護師のAさんが辞めたいっていうんですよ。前の面談の時に別に職場に不満があるわけではないと言っていたし、私との関係も良好だと思っていたのにショックです」
先の看護主任は、つい最近、このような話を私にしてくれました。

この場合、主任の「私が認識している私」は、「スタッフと良好な関係性を築けている私」であり、「Aさんが認識している私」は、「本音で話をしてもどうせ伝わらないし、自分の考えを押し付けてくる人」であろうと思います。
いろいろな問題を抱え、辞めたいとまで思いつめていても、本音で話せないなら主任と話しても無駄と思い職場の不満も語らなかったのだと推測されます。

相手からフィードバックを得る

自分のコミュニケーションが相手にどう捉えられているのか。自分の思いとどのくらいのギャップがあるのか。
それを知るには、相手からフィードバックを得るしか方法がありません。

フィードバックには、ポジティブなものとネガティブなものの2つがあるとされています。
「〇〇さんは、とても話しやすい」「△△さんは、いつも的確なアドバイスをくれる」
これらは、ポジティブなフィードバックで、自分のコミュニケーションが相手に有益に機能していることが読み取れます。

しかし、大事なのは、むしろネガティブなフィードバックの方ではないでしょうか。なぜなら、自分が意図しないで相手に思わしくない影響を与えていることや、自分の言葉が相手に影響を与えていないどころか傷つけていることさえあることに、気づくことができるからです。

ラポールの形成

ポジティブなフィードバックは、ある程度こちらも「相手はそう感じてくれている」と感覚的に理解できるのですが、ネガティブなフィードバックは、相手も婉曲的な言い方をしたり、さきほどのA看護師のように本音を言わないことが多いので、結局は「他者が認識している私」に気づくことができません。
特に、上司と部下の関係であれば、部下からネガティブなフィードバックを得る機会はなかなかないでしょう。

では、どうすればネガティブフィードバックを得られることができるか。
その最も良い方法は、「ラポールの形成」だと考えます。最も良いというより、唯一の方法と言えるかもしれません。

「ラポールの形成」は、このコラムでも何度も採り上げていますが、言葉や行動で表現せずとも相手と気持が通じ合っている状態のことを言います。
「自分も相手も、いいところも悪いところも、言い合える仲になっている」と言い換えてもいいかもしれません。

「ラポールの形成」を実現させるためには、ある程度のコミュニケーションのスキルあるとベターです。

・承認
・同一化
・ペーシング

などが、その代表的なスキルになりますが、「承認」とは、相手の価値観や体験、感情など、相手の持っている世界観を尊重すること。
「同一化」とは、相手と共通性を見出すことで、一体感が生まれる性質のことです。相手とちょっとした言葉遣い、姿勢や身振り手振りを似せることで、安心感や好感を抱きやすくなります。
「ペーシング」は、呼吸や話し方、視線などを相手に合わせることです。具体的な仕草や行動を相手に合わせることで、安心感や親しみを感じさせます。

ちょっとPRめいた紹介になりますが、いずれも、当協会のセミナー「ベーシックコース」「アドバンスコース」で学ぶことができます。よかったら、ぜひお試しください。
(医療コミュニケーション協会 須田)

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