相手にとって一番響く言葉は、その人が話した言葉

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相手にとって一番響く言葉は、その人が話した言葉

何らかの組織に属する人は、多かれ少なかれ自分の考えやアイデアを会議やミーティングなどでプレゼンテーションする場面があるはずです。

データや根拠を示し、「だからこうするべきです」「これが最適プランだと思います」と、部の会議などで自信たっぷりとプレゼンを行う同僚の姿を皆さんも容易に想像できるでしょうし、皆さん自身が経験をされているかもしれません。
しかし、その際「まったくその通りだね。完璧な提案です」と全面的に受け入れられることは非常に稀で、受け手の顔を見渡せばそれほど納得したようには見えない。何となく不承不承でとりあえずは、「あなたの提案は理解した」という顔。そのような、何か煮え切らない会議やミーティングの場も経験もされているのではないですか?

コーチングを行うにあたって

コーチングでは、コーチとクライアントとの対話によって課題を浮き彫りにし、解決策を見出していくという工程をたどっていきます。

クライアントの課題を一番理解しているのはクライアント自身ですから、コーチは相手の言ったことを何度もトレースします。なぜなら、相手にとって一番響く言葉は、その人が喋った言葉だからです。

企業の若い人たちに、「自分だけの考えに凝り固まったプレゼンはしない方がいい」とアドバイスをすることがあります。
たまに、彼らのプレゼン資料を見せてもらう機会がありますが、「これでは相手に響かないだろうな」と感じてしまうことも多くあります。

よく見かけられるのが、明らかに使いまわしだろうと思われるプレゼン資料。相手先名だけ入れ替えて、目の前の相手ではなくても通じてしまうような提案です。グラフやデータなどが盛りだくさん、コンテンツがずらずらと並んでいて、とにかくボリューム感がたっぷり。一見壮観なのですが、これ、ひょっとして別の顧客に提案したものの焼き直しじゃないの?と何となく分かってしまいます。

このようなプレゼン資料より、相手の言ったことを踏まえた内容の方が遥かに刺さります。

ある病院の事例

私(医療コンサルタント)の事例を挙げてみましょう。

その病院とは、経営全般に関わるコンサルティングを4年継続して契約しています。つい先日も、業務効率化を視野においた改善プランのプレゼン資料をパワーポイントにまとめて理事長に提出したのですが、業績が順調のせいか、理事長が決めたルールがなかなか守られないという話を理事長自身がよくしていたので、その課題を盛り込んだ提案書にしました。

「我々が決めたこと。たとえば、この場所に物を置くのはやめる、というルールがなし崩しに形骸化されてしまうのです。今期も目標集患率が120%と順調に推移しているせいか、そのような些細な決まり事など取るに足りないというような空気が院内に蔓延しているような気がします。しかし、私は病院の決まり事を守らない風潮が平然とまかり通っていることが、どうしても許せません」

そのような、愚痴のようなぼやきのような話を、打ち合わせの場で理事長がポロッと口にするのです。「物を置いてはいけない場所に物を置く」というような問題は、業務改善というような大きな視点で捉えれば、従業員としては確かに取るに足りないことなのかもしれません。しかし、些細なことではあっても、理事長の胸の中ではかなりのこだわりのある事案なのです。そこを改めて反芻して問題点として挙げることで、このコンサルタントはウチの問題点をよくとらえているな、との感触を得ることができるはずです。

あるいは、プレゼンの資料の中に盛り込まなくてもいいもしれません。それをプレゼンの場で口頭で伝えるのです。その際は、相手が言ったことを一字一句トレースして言うことがポイントです。

私はよく、「理事長、前回お会いしたときこうおっしゃっていましたよね」と前置きして、前に理事長が言った文言を鸚鵡返しで伝えることを意識的に行います。

コンサルタントが自分の話をきちんと聞いてくれている、これはとりもなおさず「共感してくれている」ということに他なりません。

「ウチの従業員はおれの言うことを真面目に聞いているんだかどうか怪しいもんだ」と日ごろから感じているとしたら、それをちゃんと受け止めてくれる人間が近くにいればこれほど励みになることはありません。

完璧に準備をしない

提案、プレゼン等の方法、手法について、さらに別の角度から検証してみましょう。

提案をする際、完璧に資料を準備しなければならないという強迫観念にとらわれがちな人をよく見かけます。初めてそのような機会を得た人は、舐められてはいけないとばかり、ガチガチに理論武装してプレゼンに臨みがちです。

もちろん、事前準備の重要性を否定するつもりはありませんが、あまり完璧に準備をしていくと、説明の場で自分の想定していなかった質問などを浴びせられた時、逆にたじたじとなって、右往左往するようなことになりがちです。あ、しまった。それ、全然準備していなかったと、頭の中が真っ白状態になった時にはもう遅く、相手は「これはダメだ」との烙印を押してしまいます。

説明やプレゼンの場では無理に完璧な資料を準備しようとせず、むしろアドリブの余地を十分に残しつつ、相手が事前の打合せ時に言った言葉をそのまま反芻したり、相手の想いを反映させたプランを第一に置いて臨むことが成功の近道だと思います。

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