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ますます深刻化する医療現場における接遇の課題

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ますます深刻化する医療現場における接遇の課題

医療現場における接遇およびコミュニケーションの重要性が、様々な医療メディアや医療系の講演などで指摘されていますが、そこで採りあげられる課題は以下の3点に集約されます。

3つの接遇課題

1点目は、医療関係者、特に医師の説明責任の重要性です。
旧来の医療現場では、医師や看護師は患者へ一方的に医療を施す絶対的な立場として位置づけられ、医療は医療関係者から患者へ提供される一方通行によって成り立っていました。
ところが、近年、チーム医療の推進が謳われ、患者も医療に参加するチームの一員として扱われるようになり、医療関係者と患者が、「対等」の関係へと変化してきたことにより、一方通行の医療行為は通用しなくなりつつあります。
「医療関係者は、患者の疾病に対し情報提供をする」「患者はその情報をもとに、自分の治療方法を決定する」「医療関係者は、患者の決定に基づいて治療を実行する」という流れに沿った医療の実践を余儀なくされるようになってきました。
そこで医療関係者に求められるのは、患者のレベルに合わせた説明能力です。
つまり、患者が充分に納得して医療を受け入れられるインフォームドコンセントの精度の向上が求められてきているのです。

2点目は、地域包括ケアの推進に伴う在院日数の短縮が進む中で、医療関係者はいかにして患者やその家族が不安なく新たな療養の場や自宅へ移行させられるかという、対患者への説得の話法の問題です。

そして3点目は、医療関係者同士の意思疎通の問題ですが、これはリスクマネージメントの観点から語られるべき課題でしょう。
診療科の細分化により医療関係者にはますます専門的な能力が求められるようになり、専門家集団の縦割り化の深度が増すようになりました。すると、ともすれば、専門家同士の間で伝達ミスが起きやすい状況となることが多くなってきます。
また、医療のみならず、チームの中に介護スタッフ等の外部リソースとの連携が必要になれば、チームは次第に複雑な動きを余儀なくされることになり、患者の情報の共有が困難となります。
そこでコミュニケーションの整合性が取れないゆえの、ヒヤリハット事例が頻出するという事態を招くことになります。
チーム医療推進における多職種協働カンファレンスの場で、「どのような接遇・コミュニケーションのあり方が話し合われるのか」は重要だと思います。
以上の3点の課題を念頭に置いた上で、まずは実際の医療現場で、医療スタッフが、日常どのような接遇・コミュニケーション上の課題を抱えているかを把握することは、とても大切です。

どこが課題か?

都内の200床程度の病院1施設と、近畿地方のクリニック1施設(スタッフ15人を抱える)の医師、看護職、事務職に、接遇・コミュニケーションの機能状況を自己評価してもらいました(5点法:「よくできている」「できている」「どちらともいえない」「あまりできていない」「努力が必要」)。ベーシックなスキルについて、何が機能しているか、また機能していないかをはっきりさせることにより、自分の接遇・コミュニケーションの傾向を知ることができ、また、改善のポイントが見えてきます。
「話し方」「聴き方」「姿勢・態度」など、患者や他のスタッフと接する際の基本スキルに関しては、「よくできている」「できている」と答えた職員が多く、意識の高さとスキルの積極的な習得を日常的に心がけていることが窺えます。
しかし一方で、患者の個々の状況・訴えを把握し、その状況・訴えに見合った個別対応を的確に行うことは難しいと感じている医療関係者が多いことが明らかになりました。
患者の個別性を重視した実践に関する接遇・コミュニケーションスキルが低い傾向にあるということでしょう。

同じ接遇方法で一律に納得させることはできない

今の医療現場では、患者に不快を与えない、安心させるための一般的な基本接遇はできていますが、さらにその先、個別性を重視した接遇対応ができるまでには至っていないと感じている職員が多いようです。
このことを患者の立場から捉えてみると、親身になって対応してくれていない、「おざなりの接遇」をされていると感じてしまう場合もあるのではないかと推測されます。
たとえば、冒頭で挙げた接遇の課題の1点目「医師の説明不足」という視点で考えると、「様子を見ましょう」と言った説明の仕方をすべての患者が納得するかと言えば、「ちゃんと患者の眼を見て話す」「患者の意見は否定しないできちんと聴く」というような接遇基本姿勢を意識しながら対応したとしても、患者によっては不信感を募らせることもあるでしょう。
「本当に様子を見ることが最善なのか?」「他にやれることはないのか?」。
個別性を重視した対応とは、「どの患者も同じ接遇方法で一律に納得することはない、ということを前提に対応すべきだ」ということであろうと思います。
一般的に、患者は医療関係者に敬意と畏怖を抱いています。言葉では「わかりました。お願いします」と言っていても、本心は真逆の場合もあります。一律の接遇・コミュニケーションでは「この相手は我慢しているのではないか」と思いやることはできません。
患者は自分自身、不安の対象が明確になっていないことが多いのです。漠然とした怖さと不安があっても、それを表現できないということを前提に接することが肝心です。
医療の報酬は対価を求める「サービス」ではなく、結果として付いてくるという考えの「ホスピタリティ」に近いと言えます。
相手に関心を持ち、相手が何を望んでいるかを的確にとらえ、相手を理解しようとするホスピタリティの考え方を意識するのが、真の接遇のあり方だと考えます。

「一人ひとり」を意識する

 接遇面において、何らかの悩みを抱えている医療関係者は多く見られます。患者と上手にコミュニケーションが取れない。他の医療スタッフとの連携が上手くいかない。家族への説明が苦手だ。ルーチン業務に追われ気持ちに余裕がない等々・・・
 現実的に、医療関係者が発する一言が思いもよらない反応を招いたり、コミュニケーションエラーが命に直結するという特質があることからも、接遇・コミュニケーションのスキルを向上させることの重要性はますます高まっていきます。
個々の患者に対して一律ではなく、一人ひとりの患者に見合った接遇・コミュニケーションへとシフトしていくことで、患者の治療の意欲を向上し、ひいては職員の満足度も高まり、病院全体が活性化していくことにつながることはまちがいないことだと考えます。

私たち日本医療コミュニケーション協会は、医療現場が抱えるコミュニケーションの課題をさまざまな角度から採りあげ、月例の勉強会や様々な資格講座を通して改善の方策を検証し、医療に従事する方々のコミュニケーションスキルの向上を図ることを目的としています。ご興味のある方は、ぜひ以下ページよりお申込み/お問い合わせください。(日本医療コミュニケーション協会 須田稔)

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