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コミュニケーションは「わかりあえるための技術」ではない

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コミュニケーションは「わかりあえるための技術」ではない

在院日数の短縮化がますます加速していく中、患者や家族は不安なくスムーズに在宅や新たな療養施設に移行できるのでしょうか。そこで新たなコミュニケーション上の問題が発生し、クレームに発展することはないのでしょうか。ここでは、地域包括ケアシステムの推進における他職種協働カンファレンスにおいて、これからどのようなコミュニケーションのスキルが必要になってくるのかを検証してみます。

コミュニケーション上のトラブルは今後ますます増える

在宅看護研究センター/看護コンサルタント株式会社の代表村松静子氏は、医療スタッフが患者と向き合う際、接遇のマナーを説いたマニュアルはそれほど役に立たないと述べています1)。
医療スタッフが患者と接する場合、その人ならではの相手を思いやる心や相手の立場に立った気配りが必要だと言います。「相手の心と向き合い、欲していることを見逃さずに即座に捉え、適切な一言を発する」。コミュニケーションスキルとはそのようなものであるということでしょう。それはつまり、マニュアル的とは無縁の、そのスタッフならではのオリジナルな対応が臨機応変に発揮されなければならないということであり、マナー研修や机に座った勉強で身につくものではないということなのでしょう。
在院日数が減り、完治しないままで医療や介護の場を移動していかなければならない状況となり、患者の心は以前より大きな不安や不満に苛まれることになります。コミュニケーション上のトラブルやクレームは、さまざまのシーンで多発されるでしょう。特に看護職は患者や他の医療スタッフとの対話や、カンファレンスを実施する機会が多く、チーム医療におけるコミュニケーションの要の役割を担います。その際、絶対に正しいコミュニケーションの方法などありえず、相手のパーソナリティと向き合うには「型」にはまったコミュニケーションではなく、自分らしいやり方で接していくことが最も有効な方法であるはずです。

コミュニケーションは「わかりあえるための技術」ではない

在宅治療等においては、ケアの対象は認知機能の低下をきたしている慢性疾患の患者となる場合が多いはずです。当然のことながらコミュニケーションは困難となり、治療への協力が得られないことも少なくありません。その際、スタッフが心に留めておくべき心構えとして、現代思想家の高田明典の以下の言葉は非常に示唆に富んだコミュニケーションのあり方の根幹を成すものだと考えます。
「コミュニケーションスキルを『わかりあうための技術』であると考えるのは間違っています。そうではなく『わたしたちがわかりあえないということ』を確認する技術であり、またその状態の中でわかりあおうと努力するための技術です」
養和病院精神科急性期病棟の看護師足立洋二氏は、たとえば統合性失調症の患者に対しは、スタッフが自分自身そして患者を客観視し、傾聴と共感に尽力し、SST(ソーシャル・スキルズ・トレーニング=社会生活技能訓練)の考え方である「本人の希望を大切にすること」を常に意識し、その人の魅力や強さを引き出すことを意識しながらコミュニケーションを図ることを心がけていると言います。それは患者をわかろうとする努力そのものであり、患者もまた、制限というストレスにさらされながらも、自分が獲得すべき行動のために努力をしているのです。患者とスタッフ間での言語的、非言語的(視線や手の温もり等)の両方のコミュニケーション手段を駆使し、この相互作用により患者と看護関係を発展させるというものです2)。

コンフリクトの発生にどう対処していくか

医療の現場で往々にして生じるスタッフ同士のコンフリクト(対立や摩擦)は避けて通れません。スムーズな医療連携を実施するには、まずそのコンフリクトを健全に受け入れること、そしてコンフリクトを的確に使いこなすコミュニケーションの技術も必要になってきます。
さまざまなスタッフが絡む地域包括ケアの現場で生じるコンフリクトは、①手法についてのコンフリクト、②役割に起因するコンフリクトの2種が多いと考えます。①は、たとえば「その治療やケアの考え方には同意するが、やり方には疑問が残る」というものです。ここで言う「やり方」には、スピードや体制、アプローチや担当者など、さまざまな要素が含まれます。②は、役割上発生してしまうコンフリクトです。ある診療科の規模の縮小を議論する際に、その部門長が縮小に同意することは難しいでしょう。経営的な視点では改革の必要性を理解しているとしても、その診療科に所属しているスタッフや患者のことを考えると反対せざるをえません。
コンフリクトを解消するためには、まず客観的な事実をベースに議論を行うことが重要です。仮に「この施策は現場の混乱を招くから実行すべきではない」という議論があった場合、まず検討すべきは「施策の実行がどの程度の混乱を招くのか」という事実の確認です。しかし、残念ながら多くの医療現場では事実を確認せずにその場の感覚にのみ依拠して議論が行われることが多いのが現実です。本来ならば、現場スタッフへのインタビューや業務時間分析などの事実確認に時間を割いた上で議論を継続すべきでしょう。
そして、その施策はどの工程において混乱を呼び起こすのかを見極めることも大切です。それぞれの工程におけるコンフリクトの有無の確認により、コンフリクト発生の構造が可視化され、解消の道筋についての議論が可能となります。
そして、コンフリクトを解消するための妥協点を明らかにしていくのです。すでにこれまでの議論で発生のポイントは明らかになっているので、施策を実施する上でのスタッフ間の立ち位置や譲れないポイントも明確です。ゆえに、妥協点を模索するポイントを絞り込み、それ以外のポイントで無用な交渉や検討をせずに、議論を進めていくことが可能となります。
1),2) 看護実践の科学2014年9月 今求められるコミュニケーションスキル

私たち日本医療コミュニケーション協会は、医療現場が抱えるコミュニケーションの課題をさまざまな角度から採りあげ、月例の勉強会や様々な資格講座を通して改善の方策を検証し、医療に従事する方々のコミュニケーションスキルの向上を図ることを目的としています。ご興味のある方は、ぜひ以下ページよりお申込み/お問い合わせください。(日本医療コミュニケーション協会 須田稔)

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