「気づきメモ」の効用
主に飲食店向けの事業開発や経営コンサルタントをされている柴田陽子さんの著書、「たった1枚のメモでチームが変わる」は、医療チームにも使えそうな、メモを活用したチーム活性化のアイデアがいろいろと紹介されています。
「気づきメモ」とは?
柴田さんが開発した「気づきプログラム」は、チームで働くそれぞれのメンバーが、日々の仕事の中で気づいたことを「気づきメモ」に記入し、それを集めてみんなでシェアし合う、あるいは「気づきボックス」に投函してもらう、といったとてもシンプルなものです。
一定期間続けると、これまであまり積極的に発言をしないメンバーに対して不満がたまっていたリーダーたちも思わずびっくりするような、なるほどと思うすごい気づきが提供されてきます、と柴田さんは語ります。
具体的なサンプルを紹介します。
メモのサイズはA6サイズ。これがメモとしてはベストの大きさとのこと。
メモの上の方に「気づきメモ」とタイトルが印刷されています。
すぐその下に、日付と名前を書く欄があり、その下は自由記入スペースとなっています。
『〇〇先生の部屋に入ると、先生は製薬会社のMRと話をしていた。
MRは一生懸命持参したノートパソコンの画面を見ながら説明しているが、先生はおざなりに聞いている様子。明らかにMRのしつこい説明に迷惑な顔。
相手に良かろうと思って提供する情報が、時には相手には不要であることもあるんですね。本当に真剣に聞いてくれないとわかったら、話を上手く切り上げる会話の技術の必要性を痛感』
もう一つ、例題を挙げてみます。
『業者の方が納品に来た時、忙しかったのでちゃんと顔を見て挨拶をしなかったことに気がついた。
あとでその業者さんに感じの悪い人だなぁと思われたかもしれない』
「気づき」の連鎖
上記2つの例で挙げたような、仕事上経験した「気づき」のエピソードを簡単にまとめ、それをメンバーにシェアすることで、その「気づき」は共有され、自分にも思い当たることであれば、改善しようという気になります。
「そうか、挨拶するときは、相手の顔を見ないと失礼なんだな」
と、当たり前のこととして認識していたはずなのに、最近はうっかり見逃してしまっていたことに改めて気づく。つまり「気づき」の連鎖が起こるのです。
「気づきメモ」はチーム全体の「アイデアの種」になることもあります。
1つのアイデアが起点となって、いろいろなアイデアがチーム内で議論され、「こうした方がもっと患者さんに喜んでもらえる」「こうした方がもっと効率的だ」との意見が活発に出てくることもあります。
また、ていねいに読んでいくと、メンバーそれぞれの考えや癖、個性などが理解しやすくなります。
「気づきメモ」活用によるチーム連携の流れ
「気づきメモ」を活用した「気づきプログラム」は、以下のような流れでチーム活性化を促進します。
「気づきメモ」を通じて、メンバーと情報共有が図れる。
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自分の気づきが他のメンバーの気づきにつながり、メンバーにほめられる場面が増える。
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自分が他のメンバーのこともほめるようになり、チームに『ほめる文化』が生まれる。
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互いに「いいところ」を探すのが習慣となる。
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ほめられる機会が増え、仕事の楽しさが増す。
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一人ひとりが自立していき、率先して動くようになる。
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自分だけでなく、まわりのことも考えられるから、協調性が育つ。
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その結果、チームの連携が強くなる。
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コミュニケーションが活発になり、アイデアが生まれやすくなる。
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前向きなアイデアから「患者満足」が高まり、それが「職場全体の力」になっていく。
「気づきメモ」をアレンジして使いまわす。
自分が感動したり、思わぬ発見があった経験談は人に話したくなるものです。他の人にも感動してもらいたいし、「へぇ」って感心してもらいたいものです。思わぬ発見や感動をチームの仲間にも味わってもらいたいと思う気持ちが強く出ていると、受け手も敏感にそれを感じ取り、喜びや感動が伝わってきます。
「気づきメモ」に書かれた職場の共感を得られる話は、書き手の純粋な心から出てくる本心からの気づきの話だけです。それは別に自分経験談でなくてもかまいません。
たとえば、自分の尊敬する作家の書いたエピソードでもかまわないのです。問題はそのエピソードを自分のものとして消化しているかどうかです。
「気づきメモ」で職場の仲間たちに紹介した話材は、次に患者さんとのコミュニケーションの場でも使えるかもしれません。言葉は悪いですが話材の「使いまわし」です。一つの話材をさまざまな場面で少しずつアレンジを加えながら応用してゆくというやり方もあると思います。
何か面白い、あるいは思わぬ体験をした。よし、それを「気づきメモ」でみんなに紹介していこう。みんなの関心を得られれば、それを今度は少しアレンジして患者さんとの会話の場にも使っていこう。このように「気づきメモ」は話材の「試し」の場としても機能するのです。
(医療コミュニケーション協会 須田)
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