自分の思いを伝えられない、非主張的な私

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自分の思いを伝えられない、非主張的な私

皆さんは、周囲のスタッフの方々、あるいは家族や友人を前に、自分がどう感じているか、何を思っているのか、相手に何をして欲しいのか・・・自分の素直な想いや感情を伝えることができていますか。

多くの人は「もちろんです」と、まったく躊躇なく頷くことに抵抗があるのではないでしょうか。
ほんの少し、本心とは異なる思いが入ったり、無理に違う感情を喚起している、また、自分が言ったこと、お願いしたことを相手がしっかりと受け止め、こちらの思惑通りの行動に出るかどうかが気になる、本当にわかってくれたのだろうか・・・と、懐疑的な思いを抱くことはだれにでもあると思います。

どうして、言う事を聞いてくれないの!

ここで大切なのは、相手があなたの想いや、お願いや、感情をどう受け止めるかは、相手の問題であるということです。受け手の自由であり、それにあなたが関与してはいけません。

「何で私の言ったことを理解してくれないの。わかってよ!」
「違う、そんなこと言ってない!どうして、自分勝手に受け取るの?」

といったリアクションは、相手にとっては自分がこの人に支配されているという感情を無意識に(あるいは意識的に)持ってしまう恐れがあります。

気の弱い人、あるいはあなたより立場が下の人は、「すみません、わかりました、あなたの言うとおりにします」と返事をするかもしれませんが、そこにはっきりと支配と被支配の関係が築かれてしまっていることを感じ取ります。支配と被支配の関係を別の言葉で表現すれば「埋められない溝ができてしまった関係」と言ってもいいかもしれません。

上司と部下、先輩と後輩の関係は支配と被支配の関係であってはなりません。

あなたが上司もしくは先輩という立場であり、部下・後輩に対して何かを命令したり指示した場合、支配と被支配の関係であれば、部下・後輩はそれを「強制」と受け取ってしまいます。
もちろん、上司や先輩が命令したり指示したりすることが間違いだと言っているのではありません。命令や指示は、組織を運営する上で、また組織がスムーズに機能するためには、当然のマネジメントのあり方です。

そうではなく、問題は命令や指示を「強制」と相手が受け取ってしまうとき、そこに指示命令をした相手に対し、ネガティブな感情が起こってしまうということなのです。そして、上司の方もまた、相手を強制的に言いくるめようとしたときに、相手と同様のネガティブな感情に支配されています。「この人は、何でいつもお願いしたことを素直にやってくれないのかしら」と苛立ちが充満した感情は、その相手に接するごとに大きくなっていきます。そして、わかり合えないまま双方の溝はますます深く深くなってしまうのです。

どうせ私なんか・・・

こちらが依頼したことを、釈然としないけれど仕方がなくといった態度で「わかりました」と受けられると、依頼したこちらとしては「嫌なら嫌と、はっきりと言ってよ!」と思わず対立姿勢を露わにしたくなります。

いわゆる「はっきりしない」「態度が煮え切らない」、そのような人は、皆さんの周囲にも少なからずいるはずです。このような傾向が強い人は、心理学的にカテゴリー分けをすると、「ノン・アサーティブ」というタイプの人格に属し、「非主張的」とも呼ばれます。

ノン・アサーティブの傾向が強い相手と良好なコミュニケーションを保ったり、適切な業務指導を行うことは非常な困難を伴います。

本心を言わないだけではなく、どっちつかずの言い方をしたり、いきなり言い訳から始まったり、非感情的な顔つきや非常な小声で話をしたりします。このような態度は、ともすれば遠慮がちに見えたり、こちらに配慮しているような印象を受けますが、「私の言ってることは、きっとあなたにとっては聴くに値するものではありません。スルーしても結構です」という傲慢さも併せ持っています。自分の気持に正直ではなく、相手に対しても誠に素直ではありません。

このような非主張的な言動や態度の裏には、「どうせ自分の本心を言っても分かってもらえるはずがない」というあきらめ感と、「仕方なくあなたに譲歩したんだ」という恩着せがましさが同居し、みじめな後味をいつまでも引きずっていきます。
そして、前述したように、相手との関係が「修復しがたい深い溝」となって心の中に沈殿してしまうのです。
さらには、こちらに対し、「私の方が折れてやったのに、それに気づかない鈍感な人だ」とか「私に思いやりのかけらもない人なんだ」といった屈折した軽蔑の気持ちを抱くようになります。

双方が尊重し合う関係

ノン・アサーティブすなわち非主張的な相手と良好なコミュニケーションを図るには、アサーティブ(自分も相手も大切にした自己表現)を心がけた対応を行う必要があります。
自分の考え、やって欲しいこと、その理由などを正直に相手に伝わる言い方で表現していき、そして相手に対しても、自分の気持や意見などを自由に述べることを奨励し、真摯に耳を傾けます。

もちろん、お互いに素直に意見の交換を行えば、こちらも相手も同意したり賛同できないことが出てきます。その際、大切なことは、仮にこちらの方が立場が上だった場合、相手が納得しないまま、強引にこちらに同意するように仕向けることは意識して避けなければならないということです。

自分と相手が対等に意見を出し合いながら互いが納得する形で収束する方向に向かわなければ、「共感」という意識は絶対と言ってよいほど芽生えることはありません。

自分が良かれと思うことを、相手が納得しないままに押し付けることを、アグレッシブ(攻撃的)なコミュニケーションと言います。この一方通行のやりとりの弊害は、次回のコラムで詳しく述べていきます。(医療コミュニケーション協会 須田)

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