今、手にしているコミュニケーションスキルはいずれ陳腐化する

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今手にしているコミュニケーションスキルはいずれ陳腐化する

私がまだサラリーマンだった頃の話です。勤め先の会社と提携しているIT系の会社の社長が子会社を作りたいとの相談をしてきました。
どのような仕事を行う会社ですかと尋ねたところ、LPOのコンサルティング会社を作るのだとのこと。
LPO?
そのときはまだ聞きなれない言葉だったので、何の略ですかと尋ねたところ、「ランディング・ページ・オプティマゼーション」だということです。要はSEO対策のランディングページ版をやりたいというのが主旨でした。
約10年ぐらい前の話です。

あっという間の陳腐化

「それはいいかもしれないですね」
そのときは私もそう答えたのですが、その後数年でLPOという言葉自体が普通に流通するようになり、さらに最近ではその言葉もあまり聞かれなくなりました。LPにおけるオプティマゼーション、つまり見直し・改善による最適化が必要であることはこの10年で常識となり、A/Bテストとセットで対応できる会社が多く出現してきたからです。

特にIT領域では著しい傾向にありますが、最先端の知識や技術があっという間に陳腐化してしまうのが今の世の中です。

誰も試みたことのない領域に挑戦し、最前線に立ったとしても、すぐに追従されコモディティ化してしまう。一点集中で取り組んできたので応用がきかない。差別化も図れない。結局、最新だと位置づけていたものが、ありきたりのサービスに成り下がってしまうという状況に陥ってしまうのです。

その技術を捨てる勇気

周囲に自分と同じことをやれるほどの知識と技術を持った人間はいない。だからそこを徹底的に突き詰める。そういう生き方を否定するつもりはありません。しかし、その知識や技術が未来永劫世に求められ、追従者が出てこないという保証はありません。

一領域、一分野、一技術に固執する。それはとりもなおさず、融通が利かないという証でもあります。今は特化できていると思っている知識・技術も、10年経てば8割方が陳腐化します。常に、「次のもの、次のこと」に目線を据え、時にはこれまでの知識・技術を思い切って捨て去るぐらいの勇気が私たちには必要です。

コミュニケーションの手法も、もちろん例外ではありません。
病院に勤める事務長のAさんは、コーチングやNLPの手法を習い、人間関係が複雑に絡み合う職場で、革新的なコミュニケーション活性化の手法をいろいろと試してきました。スタッフにも頻繁にコミュニケーション系の研修に行かせ、人間関係の円滑化がすなわち、職場活性化につながる、と強い確信を持っていたのです。
ところが、いろいろ身につけたコミュニケーションのスキルのうちのいくつかは上手く機能せず、やがては陳腐化してしまうという運命を辿ってしまいました。

自分の信じ、苦労をして身につけた技術を磨き続ける。それを否定するつもりはありません。
しかし、一年後、三年後、五年後まで、そのスキルが通じるのか。反発する者、そのスキルが通じない者が出てこないという保障はあるのか。そこは常に冷静に見極めていかなければいけない視点だと思います。どんな分野であれ、獲得したスキルは、獲得した時点で古びてしまうのです。

通じないときは、かならずやってくる

「そうかもしれませんが、自分が得意な分野を手放すことは簡単にはいかないですよ」
そのような反論は予測できますが、世の中を見渡してください。

ジャンルはまったく異なりますが、かつて、デジタル化という大波によって、それまでのアナログ技術が波にさらわれたように一気に消えていきました。LPレコードの針を作っていた製造メーカーの精密な技術は無用の長物となり、写植の機械を何台も揃えていた印刷会社は機械のみならず職人も行き場を失いました(マニアックな一部の好事家への需要はあるかもしれませんが)。

そのような大きな革新の波に、自分たちの培ってきたスキルはもはや通用しないといち早く見切りをつけ、異なる分野に活路を求める。そのような決断ができる人は多くはないでしょう。コミュニケーションの分野も同様です。自分の磨いてきた特定の技術が、いとも簡単に通じなくなってしまう事態が明日にでも出来(しゅったい)するかもしれません。

このコミュニケーションのやり方はもはや通じない、だったらこの部分を改善して、まったく違う分野のあの技術と合体させると面白いかもしれないというような、柔軟な発想を持ち続けることが大切だと思います。何もかもが陳腐化してしまう前に、自分の中で技術革新を繰り返して常に新しいコミュニケーションの方法を模索する。常にそのような気構えでいたいものです。

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